Feature#ダメ物件実例#高利回り#物件レンズ

駅徒歩3分で利回り21%。うますぎる数字の中身を開けてみる

利回り21%の物件で、通る項目と警告の付く項目が同居していることを示す図

RETTO チームです。今回から、収益物件のポータルサイトに実際に掲載されていた物件を教材に、「一見よさそうな数字の読み方」を書いていきます。物件が特定されないよう場所や広さの一部はぼかしたうえで、判断に使う数字はそのまま扱います。

収益物件のサイトで「利回り21%・駅徒歩3分・370万円」という物件を見かけたら、最初にどこを確認しますか。想定賃料の妥当性でしょうか、それとも築年数でしょうか。

この物件が並んでいた一覧ページの1画面(50件)を数えてみると、表面利回りが10%を超える物件は13件、20%を超えるのはこの1件だけでした。しかも駅徒歩3分、賃貸中のオーナーチェンジ物件で、価格は370万円。数字だけ並べると、掘り出し物に見えます。

この公開数値を、RETTO の物件レンズ(中古区分マンション向けのチェックリスト)に通してみました。結果、3つの項目に警告が付きました

この物件の数字

公開されていた情報のうち、判断に使う数字を並べます。

  • 価格と収支: 価格 370万円 / 想定賃料 月6.7万円(年80.4万円) / 表面利回り 約21.7%(自計算) / 管理費 月12,000円 / 修繕積立金 月10,000円
  • 建物: 1991年築(築35年)・RC造 / 専有50㎡台 / 賃貸中(オーナーチェンジ)
  • 立地: 首都圏郊外の私鉄駅 徒歩3分 / 地域の賃貸空室率 15%台(住宅・土地統計調査 2023)

一見、悪くない

先にフェアに書くと、通る項目はきちんと通る物件です。

1991年築なので、1981年6月の建築基準法改正後の新耐震基準を満たしています。駅徒歩3分は、賃貸需要の定石とされる「徒歩10分以内」を余裕でクリアします! 地域の賃貸空室率も15%台と、全国平均(同じ調査の集計で18.6%)を下回っていて、需給が崩れたエリアではありません。賃貸中ですから、引き渡しの翌月から家賃が入る、と読める状態です。

だからこそ「一見よさそう」に見えます。ただ、ここまでの項目はどれも、マイソクの目立つ場所に書かれている情報だけでできています。

数字を2つ足すと、利回りが崩れはじめる

管理費 12,000円と修繕積立金 10,000円。この2つを足すと月22,000円で、賃料6.7万円の 約33% にあたります。

RETTO の物件レンズは、中古区分マンションの場合、管理費+修繕積立金が賃料の30%を超える組み合わせに警告を出します(健全の目安は20%以下)。この2つのコストは所有者の努力では下げられず、むしろ築年とともに上がっていくことが多い、つまり あとから直せない種類の数字 だからです。

単純計算してみます。年間賃料80.4万円から維持費26.4万円を引くと54万円。表面利回り約21.7%は、管理費と修繕積立金を引いただけで14%台まで落ちます。ここからさらに固定資産税・入退去のコスト・空室期間を引いていくことになるのですが、実はこの物件には、その手前にもっと大きな一行があります。

価格の意味を変える一行

権利形態の欄には「旧法賃借権」とありました。土地が自分のものにならない、借地権の物件です。

誤解のないように書くと、旧法賃借権そのものが欠陥というわけではありません。旧法の借地権は借り手の権利が強く、更新を重ねながら長く保有し続けることもできます。問題は、所有権と比べたときの構造です。売るときに買い手が付きにくい、金融機関の融資が付きにくい、残存期間や地代の条件次第で資産価値が目減りしやすい — この3つの向かい風が、価格と出口の読み方を変えます。そのうえ毎月の地代がいくらか、更新料がいくらかは、掲載情報からは分かりませんでした。備考欄からは、ほかにも費用がかかるらしい、というところまでしか読み取れません。

つまり先ほどの14%台という数字から、さらに金額不明の地代が引かれます。370万円という価格と約21.7%という利回りは、この一行とセットで読んではじめて意味の分かる数字でした。

物件レンズの判定

この物件の公開数値をレンズに通した結果です。

  • 🔴 維持費比率 32.8% — 管理費+修繕積立金が賃料の30%超。あとから下げられないコストが実質の収支を圧迫する構造
  • 🔴 旧法賃借権 — 出口・融資・資産価値の3つの構造的な向かい風。地代・更新料・残存期間の確認が必須
  • 🔴 立地×利回りのバランス — 郊外立地でこの水準の利回りは、維持費の超過・賃料の下振れ・重大な瑕疵など「価格が下がっている理由」が裏に隠れていることが多い組み合わせ
  • 🟡 表面利回り20%超 — レンズは、高すぎる利回りそのものを警戒シグナルとして扱います

一方で、新耐震・駅徒歩・地域空室率の3項目は PASS でした。魅力が全部ウソだったわけではなく、魅力的な項目と警告が同じマイソクに同居していた、というのが正確なところです。

この型の見分け方

手順はひとつだけです。利回りの大きさに目を引かれたら、その足で権利形態の行と、管理費・修繕積立金の2つの数字を見にいくことです。(管理費+修繕積立金)÷ 月額賃料が30%を超えていたら、表面利回りが何%でも収支は成立しにくい構造です。

私たちがこのシリーズで実例から始めることにしたのは、基準のリストを暗記するより、「うますぎる数字を見たときに何を確認するか」という順番で覚えるほうが、実際の物件探しで使えると考えたからです。基準側の全体像は、先日公開した購入前に確認したい 12 の観点(初期スクリーニング編)にまとめています。RETTO の物件レンズは、こうした基準を 8 つのカテゴリに分けて収録していて、物件の数字を入れると、どの基準に引っかかったかが理由付きで返ってきます。

気になる実例があれば教えてください

この記事は、特定の物件の購入や見送りをおすすめするものではありません。チェックに使ったのは公開数値から機械的に確かめられる基準で、最終的な投資判断はご自身に委ねられます。

「この数字はどう読めばいいのか」という物件パターンや、シリーズで取り上げてほしい実例の型があれば、お問い合わせフォームから送っていただけるとうれしいです。次の教材にさせていただきます。

公開: 2026年8月1日