物件の空室と、街の空き家。そのエリアは、本当に「健全」か?

RETTO チームです。今回は、エリア分析に新しく加えた「空き家率」という指標の話を書きます。
物件を検討するとき、その部屋がどのくらい埋まるか — 賃貸の空室率は、誰もが真っ先に気にする数字ですよね。では、その物件が建つ街全体に、どれだけ住宅が余っているかは、どうやって把握していますか?
総務省の調査によると、全国の空き家率は過去最高の 13.8% にのぼります。およそ 7 戸に 1 戸が空き家という計算です! しかも近年とくに増えているのは、賃貸に出されるでも売られるでもなく、相続したまま放置された家や、長く人の住まない家 — いわゆる「その他の住宅」です。こうした空き家は、すぐには表に出てきません。けれど 5 年後、10 年後の街の姿には、確実に効いてきます。
そこで RETTO は、市区町村ごとの空き家率を、エリア分析の新しい指標として追加しました。しかも、よく混同される「賃貸の空室率」とはっきり分けて、内訳まで見られる形にしています。
「空室率」と「空き家率」の違い
ここが一番のポイントです。賃貸の空室率と、街全体の空き家率は、そもそも分母が違う別の数字です。
- 賃貸空室率 = 賃貸に出ている空き部屋 ÷ 借家全体。「いま貸したら埋まるか」という、賃貸マーケットの体温計
- 空き家率 = 空き家すべて ÷ 街の全住宅。「街にどれだけ住宅が余っているか」という、街全体のストックの健全性
この 2 つは、似ているようでまるで違う話をしています。賃貸の空室率が低い街でも、空き家率が高いことは普通にあります。貸し出されてすらいない家 — 持ち主が亡くなって相続でもめている家、施設に移って空いたままの家 — が、街の片隅に静かに積み上がっているケースです。
だからこそ私たちは、この 2 つを 1 枚のカードの中で、左右に並べて見られるようにしました。片方だけを見て「この街は健全だ」と早合点しないための作りです。
空き家を分ける 4 つの内訳
空き家とひとことで言っても、中身はかなり違います。RETTO のカードでは、空き家を 4 つに分解して表示します。
- 賃貸用: これから貸し出す予定の空き家
- 売却用: 売りに出ている空き家
- 二次的住宅: 別荘やセカンドハウス
- その他(相続放置・長期不在): 貸すでも売るでもなく、ただ空いている家
注目したいのは最後の「その他」です。賃貸用や売却用は、いずれ市場で動く前提の空き家ですが、「その他」は出口の決まっていない空き家です。相続したまま手がつけられない、持ち主が遠方や施設にいて長く不在 — そういう家がここに入ります。この「その他」が多い街は、住宅の新陳代謝が止まりかけているサインとして読めます。将来的な地域の活力の低下や家賃相場の下落、いざ手放したいときに買い手がつきにくいといった、出口の想定にとっての向かい風要因になりうる数字です。
その街に住宅が「余っているか」だけでなく、ちゃんと「動いているか」まで見たい
同じ「空き家率 10%」でも、これから貸す部屋が多いのか、誰も手をつけない家が多いのかで、街の意味はまるで変わります。だから私たちは、空き家を 1 つの率に丸めず、内訳のまま見せることにこだわりました。
街ごとに並べる「放置空き家率」
さらに今回、エリア比較のランキングに 「放置空き家率」 を加えました。さきほどの「その他の住宅」が、街の全住宅に占める割合です。
数字を出してみると、上位には地方都市や観光地が並びやすい傾向があります。別荘が多い土地や、人口が流出して相続物件の滞留しやすい街です。逆に、都心や人気の住宅地ではこの比率が低く出ます。これは良し悪しの判定ではなく、その街がいまどんな局面にいるかを読むための、向かい風要因のひとつとして置いています。
なお、同じ市区町村のなかに複数のエリアがある場合は、二重に数えないよう 1 つにまとめています。
あえて、1 つの点数に丸めていません
正直に書くと、この指標にはいくつか限界があります。
まず、もとになる調査は 5 年に 1 度 です。毎月動く家賃相場のようなリアルタイム性はありません。さらに数字は市区町村の単位なので、「同じ区でも駅前と外れでは事情が違う」といった、町丁目レベルの解像度までは追えません。
それでも、率を 1 つに丸めたり、星 3 つのようなスコアに変換したりはしませんでした。空き家率・賃貸空室率・内訳は、それぞれが別の問いに答える数字です。混ぜてしまうと、かえって読めなくなります。**利回り重視で短期に攻めるのか、10 年後の出口を見据えて手堅くいくのかによって、これら 4 つの内訳が持つ意味は変わってきます。**最終的にその街をどう見るかは、ほかの指標と合わせて、あなた自身の判断に委ねたいと考えています。
2 つの数字を、並べて見てみてください
インサイトボードでエリアを開くと、空き家率と賃貸空室率が左右に並んで表示されます。まずは気になる街を 1 つ開いて、この 2 つの数字がどれだけ違う顔をしているか、見比べてみてください!