Feature#エリア分析#姫路#兵庫県

地価は神戸の約3分の1。新駅とアリーナがそろう姫路の「安さ」をどう読むか

姫路エリアの地価推移と温度感「中立」を示すRETTOの分析画面

RETTOチームです。今回は兵庫県の姫路市を取り上げます。世界遺産の城で知られる、播磨エリアの中核都市です。

首都圏や京阪神の価格高騰を横目に、地方中核市へ目を向けるとき、何を手がかりにしていますか。利回りの高さでしょうか。それとも、新駅や大型施設といった再開発のニュースでしょうか。姫路はいま、その両方が同時に目に入る街です。

2026年の姫路では、3月にJR山陽本線の新駅「手柄山平和公園駅」が開業し、10月にはその駅とデッキで直結する大型スポーツ施設「大和工業アリーナ姫路」が開館します。一方で足元の公示地価は10年で+9.3%、直近1年で+1.73%と穏やかな動きにとどまり、2025年の住宅地に限れば前年比▲0.19%とわずかに下がりました。イベントは派手なのに、地価は静か。しかも上がる場所と下がる場所が、同じ市内ではっきり分かれています。

RETTOは、国土交通省の公示地価鑑定評価書30地点をはじめとする公的データから、姫路の現在地を追い風要因と向かい風要因の両面で整理しました。先に結論を書くと、姫路の温度感は「中立」です。追い風は商業地に、向かい風は住宅地に吹いている。この記事では、その分かれ目を数字で確かめていきます。

姫路はいま、どんな街か

鑑定評価書30地点に共通するのは、JR姫路駅からの距離が価格を決めるという構図です。住宅地の買い手はサラリーマン層の一次取得者が中心で、駅徒歩圏や利便性の高いエリアでは「底堅い需要」と評価する鑑定士が目立ちます。駅前の商業地は、姫路城のインバウンド観光が回復したことで人流と出店需要が再加速しており、買い手には法人や全国チェーン店も並びます。

ただし、明るい話が市内全域に及んでいるわけではありません。西二階町・呉服町といった旧来の商店街では繁華性の低下が複数の鑑定士から指摘され、20地点以上の評価書が「立地条件による地価の二極化拡大」を明記しています。30地点のうち約22地点が「上昇」「強含み」「底堅い」に言及する一方で、その上昇は駅前と利便地に集中している、という読み方が実態に近いはずです。

もうひとつの顔は、ものづくりの街です。川崎重工・三菱電機・ダイセルといった播磨臨海工業地帯の大型事業所を抱え、単身からファミリーまでの賃貸実需をこの雇用基盤が支えています。

数字で見る姫路

公示地価の推移を並べると、この10年の姫路が見えてきます。

  • 2015年: 16.1万円/m²
  • 2020年: 17.7万円/m²
  • 2021年: 17.1万円/m²(コロナ期に下落)
  • 2025年: 17.6万円/m²(10年で+9.3%、直近1年+1.73%)

2020年に付けた水準を、5年かけてまだ取り戻す途中です。回復基調ではあるものの、勢いのある上昇とは言えません。

さらに2025年の公示地価を用途別に分けると、様子が変わります。商業地・工業地が上昇する一方、住宅地は前年比▲0.19%。商業地の平均は20.9万円/m²で、神戸市中央区の3分の1〜4分の1の水準です。絶対額が低いぶん表面利回りは出やすい構造ですが、その「出やすさ」を収益に変えられるかどうかは、後述する空室の数字と併せて読む必要があります。

追い風要因

いちばんの追い風は、2026年に集中したインフラの実装です。

3月、姫路駅と英賀保駅の間に手柄山平和公園駅が開業しました。構想中の新駅ではなく、すでに電車が停まっている駅です。10月には、この駅とデッキで直結する大和工業アリーナ姫路(姫路市立ひめじスーパーアリーナ)が開館します。さらに2027年には駅前広場と周辺道路の整備が完了する予定で、2028年にかけては姫路駅南西エリア7.4haの土地区画整理も進行中です。新駅→アリーナ→駅前整備と、姫路駅の西側で追い風のイベントが3年続けて予定されています。図面の上の期待ではなく、時刻表とカレンダーに載った追い風です!

アクセスの厚みも下支えになります。姫路は新幹線のぞみの停車駅でありながら、山陽電鉄でも神戸・大阪方面と結ばれており、京阪神への通勤圏として一定の実需があります。そして前述の播磨臨海工業地帯の雇用基盤。地価の絶対額の低さと合わせて、「実需に支えられた安さ」が姫路の強みになりえます。

注意したい点

最大の論点は、賃貸の空室です。

2023年の住宅・土地統計調査ベースで、姫路市の借家の空室率は24.0%。全国平均(約16%)を大きく上回る水準です。姫路のワンルームの表面利回りは約7.3%と数字の上では魅力的に見えますが、4戸に1戸が空いている市場では、想定家賃がそのまま入ってくる前提が崩れやすくなります。表面利回りの高さは、空室率24%と同じ土俵に載せてはじめて意味を持ちます

長期の人口も向かい風です。国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとにした姫路市の見通しでは、2050年の人口は約43万人、2020年比で▲19%。賃貸需要の総量は、長い目で見れば縮む方向にあります。住宅地の地価が2025年公示で前年比マイナスに転じた背景にも、この需要の弱さが横たわっています。

物件タイプ別の需要の厚み

同じ姫路でも、物件タイプで景色は大きく異なります。RETTOの判定はファミリー向けが「様子見」、ワンルームが「薄い」です。

ファミリー向けマンション:様子見

実需そのものは底堅い街です。播磨臨海工業地帯の転勤族・メーカー勤務世帯が買い手と借り手の両方に控え、新築マンションはプレディア姫路・ウエリス姫路が4,000万円台から供給されています。中古マンション価格は過去10年で+28.5%と、資産性も一定の評価ができます。2024年7月からは0〜18歳の医療費が所得制限なしで全額助成になり、子育てコスト面の競争力も上がりました!

それでも「様子見」にとどめているのは、住宅地地価の微減と長期の人口減少圧力が重なるためです。駅徒歩圏から外れた物件ほど、需要縮小の影響を先に受けやすい点には注意が要ります。

ワンルーム投資:薄い

判定は「薄い」です。1R・1Kの賃料は月5万円前後、表面利回りは約7.3%と数字は立ちますが、空室率24%の市場ではワンルームこそ競合が多く、値下げ競争に巻き込まれやすい構造にあります。工場勤務の単身者という需要源は確かに存在するものの、既存在庫が消化されていく過程をまず確認したい段階です。新駅とアリーナが賃料や空室率にどう効くかは、現時点ではまだデータがありません。

見方を見直すシグナル

姫路の評価を左右する分かりやすい定点は、空室率と賃料の動きです。

アリーナの開館は2026年10月なので、周辺の賃料や空室のデータが出そろうのは2027年にかけてになります。人流が増えても空室の改善が確認できなければ、「安いが埋まらない」構図が続いていると読むべきです。逆に、2027年の駅前整備の完了まで含めて人流と入居が定着するなら、駅西側エリアの見方は変わりえます。あわせて、雇用基盤である播磨臨海工業地帯の主要事業所の動向も、需要の土台を測る定点になります。

だから姫路は「中立」

商業地の追い風と住宅地の向かい風が、同じ市内の別々の場所で吹いている。どちらか一方だけを見て評価を振り切れないことが、姫路の温度感「中立」の中身です。

ただ、姫路が多くの「中立」の街と違うのは、判断材料が増える日付がすでに決まっていることです。新駅は開業済み、アリーナは今年の10月、駅前整備は2027年。期待で買う局面ではなく、実際の人流・賃料・空室のデータを確かめながら考えられる、答え合わせの材料が順番に届く時期に入っています。

RETTOでは、この記事で使った公示地価の推移や鑑定評価30地点の要約の冒頭を、姫路のエリアページで公開しています。エリアページはログイン不要・無料で見られます。鑑定評価の要約の全文や物件タイプ別の判定、ハザード分析といった続きは、無料会員登録で見られます。登録も無料です。

エリア分析への感想や「次はこの街を見てほしい」という要望は、お問い合わせフォームからお寄せください。投資するかどうかを最後に決めるのは、あなた自身です。RETTOはその手前にある、数字を並べて確かめる作業を引き受けます。

公開: 2026年9月14日