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高輪ゲートウェイの6000億円再開発。それでも地価判断が「中立」な理由

高輪エリアの地価推移グラフと温度感「中立」を示す RETTO のインサイトボード画面

RETTO チームです。今回は、東京都港区の高輪を分析します。

都心の再開発エリアを投資先の候補に入れるとき、「盛り上がっているのは分かるけれど、今から入って高値掴みにならないか」と迷うことはないでしょうか。高輪は、その迷いが一番大きく出る街のひとつです。

高輪の公示地価は、2025年で 314万円/㎡。10年前の 168.88万円から +86%、直近1年でも +14.43% 上がっています。数字だけ見れば強い追い風です。ただしこの水準は東京23区平均のおよそ2倍で、ファミリー向け中古マンションの平均を 1.27億円まで押し上げました。上がり続ける地価は、買う側から見れば「乗り遅れたくない材料」と「もう高すぎる材料」の両方になります。

RETTO は、国土交通省の公示地価鑑定評価書30地点をはじめとする公的データから、このエリアの現在地を追い風要因と向かい風要因の両面で整理しました。先に結論を書くと、高輪の温度感は「中立」です。追い風と向かい風が、同じくらい強く吹いている街。それが高輪の姿です。

高輪はいま、どんな街か

鑑定評価書30地点にほぼ共通して現れるのは、高輪・白金・白金台・三田・南麻布・麻布十番をひとつの需給圏として見る視点です。住宅地の主な買い手は富裕層の個人と大手マンションデベロッパー。とくに 1,000㎡ を超える大きな区画は、デベロッパーが分譲マンション用地として取得するケースが中心だと複数の鑑定士が指摘しています。

商業地になると、買い手の顔ぶれが変わります。JR・地下鉄の主要駅まわりでは、国内外の不動産ファンドや機関投資家が主役です。品川港南口の超高層オフィス街だけは需給圏が都心5区まで広がり、大手ファンドが想定の買い手として登場します。

鑑定士がそろって強調するのは、この地域のブランドと、土地の供給が少ないことです。麻布十番・白金台・南麻布では富裕層の選好が強く、取引が高値で成立しやすいという指摘が目立ちます。港区の人口と世帯数がコロナ禍前を上回って増え続けている点も、住宅需要を下から支える構造として複数の評価書に記されています。

数字で見る高輪

地価の動きを時系列で見ると、高輪の10年がよく分かります。

  • 2015年: 168.88万円/㎡
  • 2025年: 314.0万円/㎡(10年で +86%)
  • 直近1年: +14.43%

10年で 1.86倍、しかも直近1年の伸びが加速している点が特徴です。鑑定評価のタグでは、温度感は「強上昇」と整理されています。30地点のうち27地点で、年 +10% を超える変動率を記録しました。一方で同じタグには「金利感応度が高い」「取引が出にくい(土地供給が希少)」という注意点も並びます。数字は強いのですが、その強さには金利と品薄という前提が付いている、という読み方になります。

追い風要因

高輪に追い風として働く要因は、まず再開発です。

6000億円規模の TAKANAWA GATEWAY CITY はすでにまちびらきを迎え、KDDI・マルハニチロの本社移転も完了しました。構想ではなく、現実に街が動いている段階です。さらに2026年から2032年にかけて、品川駅西口で4地区の超高層ビル群の再開発が控えています。ひとつの波が終わる前に、次の波が見えています。

賃貸の需給も追い風側にあります。都心5区のAグレードオフィスの空室率は 0.9% と、ほぼ枯渇の水準です。品川エリアの賃料は前年比 +7.5%。オフィスの強さは、そこで働く人の住まい需要を下から支えます。加えて港区は2050年まで人口が +20% 増える見通しで、日本全体が縮むなかでは希少な立地です。

注意したい点

一方で、向かい風もはっきりしています。最大の論点は利回りです。

地価 314万円/㎡ は23区平均の約2倍。ファミリー向け中古マンションは平均 1.27億円に達しています。この価格帯では、家賃収入で回していく投資は成立しにくくなります。価格はすでに、再開発への期待を大きく織り込んだ水準にあります。10年で +86% という上昇は、裏を返せば、これから買う人は上がりきった値段から入るということです。

供給面の注意点もあります。2028年から2032年にかけて、高輪ゲートウェイシティで 23万㎡、品川西口で 45万㎡超のオフィスが新たに供給される予定です。需要がこれを吸収できなければ、一時的に需給がゆるむ局面が来る可能性があります。

物件タイプ別に見る需要の厚み

同じ高輪でも、物件のタイプによって需要の厚みは違います。RETTO はどちらも「様子見」と整理しています。

ファミリー向けマンション:様子見

教育・再開発・人口増の三拍子がそろう点は、実需の強さそのものです。白金小学校は私立中学の受験率が100%近く、高輪台小学校も 70〜80%。港区は2019年から待機児童ゼロを続け、子ども医療費の助成も18歳まで所得制限なしと、子育て環境は盤石です。

ただ、その実需の強さがそのまま価格に乗っています。中古ファミリーの平均は 1.27億円(2024年、5年前比 +69%)。実際に住む目的なら合理的でも、投資として利回りを設計するには難しい価格帯だといえます。

ワンルーム投資:様子見

単身者の需要は構造的に強い街です。高輪ゲートウェイ駅・品川駅・白金高輪駅の3駅圏で都心アクセスは抜群、本社移転で品川エリアのビジネスパーソン需要も増えています。それでも判定が「様子見」なのは、やはり利回りです。1R・1K の賃料は 12〜15万円ですが、地価の高さから表面利回りは 3%台前半に圧迫されます。

さらに2026年4月には、高輪ゲートウェイシティのレジデンス 814戸が入居を始めます。中古ワンルームの家賃がこの大量供給からどんな影響を受けるかは、しばらく読みづらい状況です。

見方を見直すシグナル

追い風の街でも、前提が崩れれば見方は変わります。分かりやすいシグナルのひとつが、オフィスの空室率です。

いまは空室率 0.9% という逼迫が需給を支えていますが、これが 5% を超えて推移するようだと話は変わります。2028年からの大量供給が需要を上回る局面では、収益性が悪化する可能性が高まります。追い風の根っこにある「空室の枯渇」がゆるんでいないか。ここは定点で見ておきたいところです。

だから高輪は「中立」

高輪は、追い風も向かい風もどちらも強い街です。だから RETTO の温度感は、どちらかに振り切らず「中立」に置いています。

大切なのは、この中立をどう読むかです。再開発と人口増という長期の追い風を重く見るのか、利回りの出にくさと上値の重さを重く見るのか。その比重は、あなたの投資基準によって変わります。高輪が候補に入るかどうかは、「買うべき街かどうか」ではなく、「自分の基準に照らして確かめる価値がある街かどうか」で見るのが現実的です。

RETTO では、ここで触れた30地点の鑑定評価や地価の推移、物件タイプ別の判定を、高輪のエリアページでまとめて確認できます。数字の出どころもすべて開いて見られます。追い風と向かい風のどちらを重く見るか、ご自身の目で判断する材料にしてください。

エリア分析への感想や「このエリアも見てほしい」という要望は、お問い合わせフォームから送っていただけるとうれしいです。最終的な投資判断はご自身に委ねられます。RETTO は、その判断材料を中立に整理する立場です。

公開: 2026年7月1日